2010/03/26

第1章 序論/1.2 研究の目的と課題

韓国では住宅の商品化が進行する中で、住宅市場において情報非対称性の問題を解消するために住宅性能表示制度が施行されている。これは需要者の保護のみならず、適切な住宅選択を図り、良質の居住形態の実現に向けての役割が期待されるものであり、質の時代の住宅政策の推進に欠かせないものである。しかし、韓国において社会に広く普及して役割を果たすことができるかどうかは未だ予断を許さない状況にある。住宅性能表示制度の早期定着と、需要者による住宅選択を効果的に支援するためには、制度の受容特性を注視し更なる検討が求められている。本研究では、韓国における住宅市場の情報非対称性の問題に着目し、住宅性能表示制度の成立と受容の実態を把握・検討し、制度の補完に向けた知見を得ることを目的とする。

(1)韓国の住宅性能表示制度の成立の解明
住宅性能表示制度の施行はいかなる事情によるものであり、どのように成り立ったのかについて把握する必要がある。制度の成立の解明は制度成立の経緯と制度の枠組み(仕組みや性能項目)、そして制度による住宅市場の補完(以下市場の補完)を明らかにすることという。先ず、制度の成立の経緯は住宅供給政策や導入過程の考察を通じ、住宅性能表示制度が必要とされた間接的な背景と直接的な背景を明らかにする必要がある。また、このような背景は制度の枠組みにどのような影響を与えたかを解明するために仕組みや性能項目など、制度の枠組を明らかにする必要がある。更に、こうした韓国の住宅性能表示制度の成立の特徴を国際的視点から日本の制度の成立との比較・検討を通じて市場の補完の特徴を明らかにする必要がある。

(2)韓国の住宅性能表示制度に関する供給者と需要者の意識の把握
住宅性能表示制度は、基本的に住宅市場を望ましい形へと導くための対人的対策であり、直接に供給者と需要者に向けている。新しい制度が与える影響は制度にかかわる利害関係者により多様な考えが交錯する可能性が高いために住宅選択や住宅の取引の局面でどうように使われているかを把握する必要がある。更に制度の受容をめぐる問題を考えると、需要者や供給者の既存慣習や慣行によって、制度が必ずしも素直に受け止められるとはいえない。従って、制度の影響を受ける需要者と供給者の意識及び評価を実証的な把握は不可欠である。先ず、供給者側には制度の利用と取組み、制度の評価等に対して意識及び評価を把握し、実務的な立場から制度の問題を明らかにする必要がある。次に、需要者側には住宅需要及び選択意識、性能に関する意識、認知度等を把握し、制度の普及や実効性を明らかにする必要がある。更に、供給者と需要者の総合的視点から住宅性能表示制度の補完に向けた基本的方向を探る必要がある。

(3)韓国の住宅性能表示制度の制度の補完の模索
住宅性能表示制度が住宅市場において有効な対策として役割を果すためには、上記に指摘された問題解決のための実践的模索として需要者による住宅選択を効果的に支援するために制度の補完の模索が必要である。先ず、評価書の情報の円滑な流通のために不動産情報提供体制に着目し、不動産情報提供者を対象とし制度の取組みと評価、今後の情報提供体制のあり方等の意識を把握し、評価書の情報の流通をめぐる問題を明らかにし、現住宅性能表示制度と不動産情報提供体制との接点を探る必要がある。次に制度の補完のために韓国において国際的な視点から日本の供給者の受容特性との比較・考察し、韓国の制度の受容の特徴を明らかにし、制度発展の段階を示す必要がある。

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