2010/04/14

第4章 韓国の分譲集合住宅需要者の住宅選択と住宅性能に対する意識/4.1 はじめに

 本章では、韓国における住宅需要及び選択に関する需要者の意識と住宅性能表示制度の浸透実態を把握し、これらをめぐる問題及び課題を考察し、更なる制度の補完に向けた知見を得ることを目的とする。韓国の「2003-2012住宅総合計画(建設交通部,2002)」によると、住宅政策の目標は、質の時代やストック時代に向けた住居水準の向上、住宅市場の安定基盤の構築等を目指しており、その流れの中で「住宅性能表示制度(2006)」が施行された。住宅性能表示制度は、既存の政策との大きな違いがあり、対物的対策から対人的対策への転換を意味する。また、需要者に対して有用な情報を提供することによって適切な住宅選択行動への誘導を図る「情報伝達的手法」ということができ、消費者保護行政の展開であるといえる。

しかし、韓国における住宅性能表示制度は、住宅需要者の住宅選択の目安として活用を目指しているが、あくまで現段階において行政・専門家と生産・供給者の間に合意ができたものにすぎない。また、需要者側の意識や使用局面を十分に捉えたとはいえないため、需要者の合理的な住宅選択を図るかどうかは予断することができない。さらに、制度の有効性や実効性をめぐる主な論点には、需要者の立場が関わっている。施行初期で社会へ浸透実態と需要者の住宅需要及び選択意識等に関する制度の普及に向けの検討が必要であると考えられる。先行実施した韓国の供給者の意識調査に引き続き、需要者の意識調査を行うことにより住宅性能表示制度に関する総合的な議論ができると考える。

研究の方法については、調査概要を表4-1に示す。先ず、需要者の住宅需要及び選択意識と住宅性能表示制度の浸透実態を明らかにするために、住宅性能表示制度の認定を受けた「K」物件の供給者(ディベロッパー)と需要者(契約者とモデルハウスの訪問者)を対象として意識調査を行った。次に需要者の立場から合理的な住宅選択をめぐる問題と住宅性能表示制度の普及をめぐる問題を議論し、住宅性能表示制度の補完に向けた取組みを提示した。

表4-1 韓国のK物件(認定物件)の調査概要[1] 


[1] 「*」:この中の8名は直接合う機会があり、質問票調査の協力を得た。

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