住宅性能表示制度関連の研究については、1976年に韓国産業規格(KS)により「建築物の部位別性能分類(KSF1010)」で性能項目が定められた。また、1980年代の住宅建設の工業化の進展を背景として1990年代初めに住宅需要者の立場を考慮した性能評価認定制度の議論(HONG,1991)[1]が始まり、「工業化住宅認定制度(1992)」が導入されたが、これは供給者(生産者)側の設計及び生産目標を与える役割を果たすものである。一方、1990年代初から国土研究院より瑕疵(欠陥)に関連した住宅需要者(消費者)の問題を立ち上げ、住宅性能や住宅品質保証の体制構築及び整備の研究[2]が行われており、需要者に向けた多様な情報提供のための公共役割の必要性を示した。
建築分野の性能評価の研究に大きな役割を果たしたのは、「韓国建設技術研究院(1983年設立)」であり、計画・設計、構造、環境設備等の部門より先行されてきた[3]。特に建築環境部門では、1984年「オフィス建物物のエネルギー効率向上に関する研究」を初め、2002年まで約130件余の研究が行われた。初期の研究は建築物の環境性能を測定・評価の研究が進み、1997年以降「国立建設試験所」との統合より建築資材及びシステム、断熱、気密、遮音試験及び評価機能を拡大してきた。その成果は、「事務所建築物の省エネルギー設計基準(1987)」、「共同住宅の省エネルギー設計基準(1999)」に続いて、既存省エネルギー設計基準を統合・改善するために「建物の省エネルギーのための制度(2001)」等、制度化に寄与している。最近には「室内空気質測定基準開発」、「共同住宅遮音性能改善方案」等へ取り込んでいる。また、設計部門では、標準化・部品化・システム化に関連研究が進み、「壁式共同住宅の標準設計基準の施行(1997)」に寄与した。また、「21世紀型標準化・部品化住宅開発のための研究(1997-2000)」、「リモデリングを考慮した建築物の設計基準(2001)」に関連研究等が進み、計画設計・構造・設備部門を統合した建築物の長寿命化の関連研究へ取り込んだ。こうした計画・設計の手法や性能評価技術の進展に加え、2000年前後に超高速情報通信建物認証制度(1999)、建物エネルギー効率等級認証制度(2001)、親環境建築物認証制度(2002)等、各種の認定制度が創設され、品質や性能の情報開示の役割を果たし始めた。特に建築物の個別性能及び部位別制度に対する規定の法制化に向け公共機関の研究を中心に性能関連の研究が進んできたといえる。
2000年代前後に日本の住宅性能表示制度の施行の影響で韓国内の関心が高まり、「大韓住宅公社」では、制度の導入の近い発想で「共同住宅の部位別性能基準作成」と「制度の導入の可能性の検討」が行われた[4]。また、一部の大手建設会社でも検討・研究が始まった[5]。しかしながら、分譲価格の高騰や居住性をめぐるトラブルが社会問題となって、急速に制度化に向けた研究が行政の委託研究が韓国建設技術研究院で行われた[6]。しかし、制度導入過程では行政と専門家を中心に推進してきたため、制度の施行直前後に供給者の立場からの様々な懸念を含めた報告が数多くみられる[7]。また、韓国における住宅性能表示制度は日本のような需要者に向けた十分な検討や議論されたとはいえない[8]。特に需要者の立場からの研究は、制度の施行前に需要者の意識調査研究(CHOI,2005)[9]が見られるが、制度施行以降では未だ見られない。
本研究では,上記の研究に引き続き、需要者の意識に基づき、合理的な住宅選択をめぐる問題と住宅性能表示制度の役割・普及をめぐる問題を議論し、接点を探り、住宅性能表示制度に関する制度の補完を模索することを特徴とする。以上より、制度の更なる検討の必要性を認識した上で、本研究は、非対称情報下での市場により生じる問題とその市場の補完に着目し、両国の住宅性能表示制度の成立特性と普及段階の違いを示すことを特徴とする。なお、本研究のような比較研究は既往研究にはみられない。
[1] 参考文献57)
本研究では,上記の研究に引き続き、需要者の意識に基づき、合理的な住宅選択をめぐる問題と住宅性能表示制度の役割・普及をめぐる問題を議論し、接点を探り、住宅性能表示制度に関する制度の補完を模索することを特徴とする。以上より、制度の更なる検討の必要性を認識した上で、本研究は、非対称情報下での市場により生じる問題とその市場の補完に着目し、両国の住宅性能表示制度の成立特性と普及段階の違いを示すことを特徴とする。なお、本研究のような比較研究は既往研究にはみられない。
[1] 参考文献57)
[2] 参考文献59),19)
[3] 参考文献61)
[4] 参考文献62),63)
[5] 参考文献64)
[6] 参考文献65)
[7] 参考文献66),67)
[8] 参考文献68)によると、日本の住宅性能表示制度の策定するあたりに学識経験者等からなる「住宅性能評価技術検討委員会(6つの分科会/WG:委員数172名、2000年6月まで376回開催した)」を設置し検討を経て、消費者団体、マスコミ関係者などからなる「住宅性能表示制度に関する意見交換会」を設置し、基本案についての意見を求めた。
[9] 参考文献70)
[3] 参考文献61)
[4] 参考文献62),63)
[5] 参考文献64)
[6] 参考文献65)
[7] 参考文献66),67)
[8] 参考文献68)によると、日本の住宅性能表示制度の策定するあたりに学識経験者等からなる「住宅性能評価技術検討委員会(6つの分科会/WG:委員数172名、2000年6月まで376回開催した)」を設置し検討を経て、消費者団体、マスコミ関係者などからなる「住宅性能表示制度に関する意見交換会」を設置し、基本案についての意見を求めた。
[9] 参考文献70)
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