(1)法的体系
本制度の導入は定期国会(第250回)で「住宅法」の改定案が発議(2004.10.22)され、国会の建設交通委員会の審議を経て翌年1月に住宅法の改定法律として公布された。しかし、下位法令等を用意するために、施行時期は1年が経過した日より施行されるようにした。従って、行政は2006年1月より施行を目指し韓国建設技術研究院に共同住宅性能等級制度に関する研究を依頼し、「住宅性能等級認定及び評価」等の具体的な施行対策を準備した。また、2005年8月に初会合を持ち、韓国住宅協会の協力を受け、業界の自体評価及び意見等を収集し、最終案を確定した[1]。韓国の住宅性能表示制度の大きな特徴は、評価対象と評価情報の開示が義務つけられていることである。「住宅の性能」に対して、大統領が決める戸数以上の住宅を供給する事業主体は、指定機関(認定機関)より住宅性能等級の認定を受け、分譲募集公告(住宅供給に関する規則)に表示するようにした「住宅法の第21条2」に基づいている。住宅性能表示制度の法的体系を図2-8に示したが、住宅法の下位に「住宅建設基準等に関する規定(大統領令)」等で本制度に関する委任事項及びその施行に関する必要な事項が設けられている。本制度は1000世帯以上の住宅を供給する物件に限られて義務付けられるものである。ただし、施行後2年間(2007.12.31まで)は2000戸以上を対象としている。こうしたのは、住宅事業の困難、技術力等の企業間格差を考慮し適用対象を調整した結果である[2]。義務制に対する住宅業体の反対が高かったが、早く制度の普及と定着を望んだ行政に受け入れなかった。また、住宅性能等級の認定基準及び手続き等に対する事項は、「住宅性能等級認定及び管理基準(建設交通部告示第2006-14号)」、「住宅性能等級認定及び管理業務細部運営指針」に定まった。しかし、別途の指定紛争処理機関等を設けず、既存の住宅法上の「瑕疵責任期間」内で発生した瑕疵の責任範囲の紛争に対しては「建築紛争調停委員会」の調停が利用できるようにした。
図2-8 韓国の住宅性能表示制度に関する法的体系
(2)認定のプロセス
韓国の住宅性能表示制度は1000世帯以上の規模の新築住宅は「事業計画承認」を受けた設計図書に基づいて性能等級認定を受け、入居者募集公告の時に等級を表示しなければならない。制度の運用は「建設交通部の住居環境チーム」と「5個の認定機関」によって行っている。認定の申請者が評価基準及び方法によって「予備評価」を実施し「認定機関」がこの予備評価と根拠資料に基づいて確認・評価する。この期間は申請者の申し込みの受付日から20日以内とする。
表2-2 韓国の設計住宅性能評価項目と評価基準(2006年基準)
性能評価の項目は設計性能を対象として「騒音」・「構造」・「環境」・「生活環境」・「火災消防等級」等の5部門から構成され14範疇の20事項を含んでいる。そして、各表示事項に従って3あるいは4の評価等級が設定された。性能規定の形態と「仕様規定」の形態の 2種に分かれる。性能規定の形態は正確な性能を定量的に算出できる場合に適用し、仕様規定の形態は定量的に表示することができない場合、あるいは難しい場合に定性的指標を並べて適用した項目数を基準にして項目別の加重値を与えて合算された点数を基準とした。
表2-3 日本の設計住宅性能評価項目と表示方法(共同住宅用,2007年基準)
[1] 「韓国住宅協会(1978)」は約70建設会社で構成され、政府に対して住宅事業に係わる不合理な規制等を建議している。韓国住宅協会と認定機関や研究機関の訪問ヒアリング調査によると、住宅性能表示制度の施行前、「韓国住宅協会」主導で大手の建設会社である10社の物件に対する評価を行ったが、ほとんど物件は3-4等級の判定を受けた。このような状況によって等級水準や評価基準・方法などの調整が行われた。
[2] 制度の導入過程で供給者は任意制を主張したが、制度の普及のために行政により認められなかった。その代わりに行政は、技術水準及び事業規模を考慮し、近年4年間に2000戸以上を供給した住宅事業の件数は約1%(1000戸以上の場合は10%)に過ぎないこと(2001-2004年、韓国住宅協会の内部資料)に着目し最初の義務対象の範囲を決めた。本制度の影響はすべての供給者ではなく、上位の大手建設会社に限られることにした。
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