2010/03/30

第2章 住宅性能表示制度の成立/2.4 日本と韓国の住宅性能表示制度の成立との比較/2.4.1 導入制度の要因

日本と韓国における住宅政策及び住宅事情等を比較すると、いくつかの相対的特徴を取り出すことができる。日本は「公共主導型」、韓国は「民間主導型」の住宅供給体制を構築し、住宅政策の機能を果たす手段も日本は「直接的手段」、韓国は「間接的手段」が中心的であった。そのような政策の流れの中で、住宅産業化、即ち、商品化や民間化という視点から主な特徴をとらえると、「住宅類型:戸建住宅(日)とアパート(韓)」「住宅構造方式:木造軸組(日)とRC壁式構造(韓)」「住宅生産者:中小規模業者(日)と建設会社(韓)」「住宅供給者:ディベロッパー(日)と大手の建設会社(韓)」「住宅商品の特徴:個別性(日)と共通性(韓)」「住宅の資産価値:下がる(日)と上がる(韓)」等の相違がみられる。

韓国の場合は、住宅性能表示制度導入の要因として分譲価格の高騰、居住性をめぐる紛争等を挙げたが、日本の場合は、日本の新築住宅市場の特徴、欠陥住宅の問題等が挙げられている[1]。特に阪神・淡路大震災の時に明らかになった欠陥住宅問題は、住宅の商品化の進展に伴う典型的な社会的な住宅問題である。阪神淡路大震災の神戸市東灘区西部での木造住宅被害状況をみると、施工の中間検査が行われる住宅金融公庫融資住宅・性能保証住宅の被害が少なかった[2]。また、日弁連が主幸する欠陥住宅110番の集計結果によると、1996年の相談総数が685件から1998年には1000件を超えている[3]。工法別には木造軸組工法が多く、入手形態別には注文住宅がほぼ5割に達しているが、東京・大阪圏では注文住宅よりも建売・分譲住宅の欠陥のほうが上回っていた。日本の場合は、欠陥住宅の防止と、建築基準法以上の高い性能への需要者のニーズに対応するための社会的仕組みが求められた。そのように異なる様相の住宅の商品化の進展の中で、日本は阪神淡路大震災の教訓、欠陥住宅の紛争等が、韓国は分譲価格の高騰、性能瑕疵の紛争等が問題になって、住宅性能表示制度の導入の主な背景となっているといえる。


[1] 参考文献23)
[2] 阪神淡路大震災復興誌(vol6,2000)
[3] 参考文献24)

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