2010/03/30

第2章 韓国の住宅性能表示制度の成立/2.4 日本と韓国の住宅性能表示制度の成立の比較/2.4.4 制度の枠組みと住宅市場の補完

(1)欠陥と分譲価格の高騰の問題の性格
両国において制度導入の主な背景になった欠陥住宅と分譲住宅価格の高騰に関する問題は、次の三つの複合作用(宮澤,1988)[1]に関係が深い。①商品の性能・安全性等、情報の不完全性は欠陥(や価格)に関する不確実性をもたらし、そのリスクが取引の過程で予知されないまま、市場価格が決定される可能性が高くなる。②このような価格の動きは、価格をめやすに行動する供給者行動及び需要者行動のインセンティブを歪める。③これらの事情は取引の交渉対等性の喪失をもたらし、力の強い側に有利な価格づけを可能にし、特に情報をより多く持つ者は優位に立つ。こうした局面より両国において各々問題がもたらすリスクの特徴や問題の解決のための着目等が市場の補完に影響を与えたと考えられる。

(2)住宅市場の補完の特徴
上記の問題の性格に基づき、両国の制度の仕組みをとらえると、両国は住宅に関する性能情報の収集や情報の質の確保等にかかわるコストの負担を軽減させるために法律に基づき、全国の共通のルールをつくったが、日本は「供給者の責任」が、韓国は「需要者の責任」が問われる環境を整備したと考えられる。先ず、日本の欠陥住宅をめぐる問題は、品質に関する情報の信頼性が重要となり、既存の責任ルールの見直しが求められる(宮澤,1988)[2]。そのため、日本の住宅性能表示制度には、責任発生の要件を欠陥存在に伴い、生産者に無過失責任を求める見方が働いており、表示性能の信頼性を担保している。従って、主に安全性を重視しながら、品確法で評価書と契約上の関係が明確に定められており、第三者の機関による設計・建設段階の評価や指定紛争処理機関による紛争対策等が設けられている。さらに、この仕組みの任意制でも欠陥をめぐる不確実性が解消されることとなる。しかしながら、性能の相互比較の役割には疑問が残る。

一方、韓国の分譲価格の高騰をめぐる問題は、質に対する適正価格に関する問題であるが、品質の相違は複雑であるため、現実に制度的に補完は容易ではない。特に韓国の住宅事情上、欠陥問題は日本に比べあまり深刻なことでないため、需要者の選択失敗の予防が求められる。その意味で韓国の住宅性能表示制度には、むしろ住宅の選択際に需要者の自己責任が問われる見方が働いているといえる。即ち、分譲価格の判断基準が求められる状況で性能による比較評価を与えるものである。単なる情報公示の効果を期待すれば、第三者の機関による設計段階の評価で信頼性を確保することができるが、評価情報のアクセスの容易性が重要となるため、義務制は不可欠であると考えられる。しかし、責任のルールや建設段階評価、紛争処理機関のような制度的に補完が行われないため、日本のものより信頼性は高いものでない。以上より両国における住宅性能表示制度の成立特性を表2-6に示す。

表2-6 日本と韓国における住宅性能表示制度の住宅市場の補完の特徴

[1] 参考文献33)
[2] 参考文献33)

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