2010/03/30

第2章 韓国の住宅性能表示制度の成立/2.4 日本と韓国の住宅性能表示制度の成立の比較/2.4.2 法的体系と仕組み

(1)法的体系
日本の制度は「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法、1999.6)」に基づいた制度であり、「日本住宅性能表示基準」によって表示すべき事項と評価を受けることができるようになった[1]。韓国の制度は「住宅法の第21条2(2005.1.8)」に基づいた制度であり、適用対象を規定した「住宅建設基準に関する規定」と「住宅性能等級及び管理基準」に基づいて評価を受けることができるようになった。日本の品確法では住宅紛争処理体制機関の設置と瑕疵担保責任の10年義務付けが設けられているが、韓国の場合は特に設けておらず従来の住宅法の規定に沿っている。こうした両国の住宅性能表示制度の法的体系を表2-4に示す。

表2-4 日本と韓国の住宅性能表示制度に関する法的体系 

表2-5 日本と韓国の住宅性能表示制度の概要[2] 

(2)制度の仕組みと普及
表2-5は、日本と韓国の住宅性能表示制度の仕組みを示したものである。これをみると、日本の制度は、契約自由の原則を基本した任意制であり、新築や既存(2002.12.17施行)住宅(一戸建住宅・共同住宅)を対象にし、供給者が第三者機関による住宅性能表示を求める場合に統一的な基準に従う客観的な評価(設計や建設段階)を行う体制を整備するものである。また、指定住宅紛争処理機関を設置し、建設段階の評価を受ければ、紛争を迅速に解消できるようにしており、評価書の交付はこの内容が契約したこととみなすことになる。その他に標準的設計(型式)により建設される住宅やそのうち規格化されたものに対して合理的な評価を行うために、住宅型式性能認定、特別評価方法認定等を設け、住宅供給者及び部品製造者に配慮した。反面韓国の場合は、施行令に定められた戸数以上の住宅を供給する事業主体が指定認定機関によって住宅性能等級の認定を受け、分譲募集公告に掲載することを義務付けているものである[3]。ただし、新築住宅の設計段階の評価しか設けられていない。また、評価書の内容が法律上で保証されるものではない。両国における制度の運用や仕組みの差異は、ある程度住宅事情及び住宅政策の違いを背景にしているが、既に1973年度から「工業化住宅性能認定制度」が行われていた日本に比べて、韓国の歴史は浅い事情がこの背景に見られる。

一方、制度の普及促進については、日本と韓国の認定実績を各々の図2-9、図2-10に示す。先ず日本の場合は、制度の施行後直ちに「住宅性能表示制度普及推進アクションプログラム」を立案・実施したり、需要者に向け「住宅性能表示制度アンケート調査」や「ガイドブック」を発行したりしており、住宅性能評価機関等連絡協議会(住宅性能評価・表示協)を設置し円滑な運用を図っている。制度の利用は供給者の任意であるが、設計評価書交付実績は2000年度11,247戸から2006年度255,507戸まで毎年少しずつ増え、普及が進みつつある[5]。最近、「構造計算書偽装物件[6]」により関心が高まり、特に建設住宅性能評価書の交付が増加した。しかし、偽装物件に設計住宅性能評価書の交付があったとの報告があり(2005.12.7,国土交通省)、住宅性能評価機関に対する管理・監督が課題になっている。

図2-9 日本の住宅性能表示制度の普及推移[4] 

一方、韓国の場合、未だ初期段階であり、義務付けの対象が1000戸以下に下がる2008年度から本格化することと考えられたが、認定実績が極めて少なかった。従って行政は、普及促進のために「インセンティブ」を行っている。現在、「分譲価格の上限制」の住宅市場で任意や義務で住宅性能制度の評価を受け、住宅性能等級評価で総160点中の80-95点以上となると、基本建築費の1-4%を加算することができる。その影響で認定物件が増えているが、制度の普及が義務制やインセンティブに依存する傾向がみられる。 

図2-10 韓国の認定実績[7] 

[1] 参考文献25)によると、日本において制度の創設のねらいは、次の3点である。①消費者による住宅の性能の相互比較を可能にする(第一次的期待)。②性能評価結果の信頼性を向上する(第二次的期待)。③評価書の表示を契約内容とすることにより表示性能を実現する(第三次的期待)
[2] 「*」:最近、韓国建設技術研究院、大韓住宅公社、韓国施設安全公団、韓国鑑定院の4つ機関になった。
[3] 参考文献23)によると、住宅性能表示の強制は契約自由の原則に大前提に反することとなり、一定額の評価費用がかかるため、選択有無にかかわらず需要者に負担を強いることになる問題もあると指摘されている。
[4] 参考文献26)の住宅性能評価・表示協会の資料を参考し作成。
[5] 参考文献21)によると、2004年の新築住宅における住宅性能表示制度の実施率は14%であるが、住生活基本法の住生活基本計画(全国計画)では、実施率50%以上を目標とする方向で検討中である。
[6] 参考文献27)によると、2005年11月17日に発覚された「構造計算書偽装事件」は、設計事務室、建設会社、ディベロッパー等が関連された欠陥住宅の事件であって、建築基準法や建築士法が改正される及び、社会的に大きく波長を引き起こした。偽装又は誤りが判明した110件(2006.3.31基準)のうち工事中・未着工のもの、精査中のものなど22を除く88件のうち、建築基準法が定める構造安全性の最低基準(保有水平耐力比0.5未満)を満たさないものが75件であった。被害対象建物には戸建て、分譲マンションやホテルがあり、ほとんど補強及び解体が不可欠なこととなって、分譲マンションの被害が広かった。需要者の資産・精神的な被害のみならず、住宅市場に対しての信頼感についても深く傷つけた。
[7] 参考物件29)を参考し作成。




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