2010/04/01

第3章 韓国の分譲集合住宅供給者の住宅性能表示制度に対する意識及び評価/3.3 韓国における住宅性能表示制度に関する論点と課題/3.3.2 表示項目と評価基準の適切性

いずれにせよ、本制度の目的が住宅取得支援ツール、あるいは性能向上にあっても、図3-4と表3-2に表れたように性能項目及び評価方法について問題点が指摘されている。この背景として①選ばれた性能項目の妥当性の疑問、②等級の向上が技術及びコスト的に困難、③予測精度が乏しい評価方法等が指摘されている。

先ず、一部の供給者は「2-1可変性」、「2-2修理の容易性」等の性能項目に対して住宅技術政策の志向・方向を含めた「技術的意欲」が前面に出すぎたものと言っており、市場のニーズと表示すべき項目の間にギャップがあることを示している。これは、行政と専門家に主導された制度化の過程に対する問題につながっているが、需要者の認識不足の側面から啓蒙的な性能項目を差し込むのは行政・専門家の役割として認められることである。しかし、高田(1991)[1]が指摘したように住宅性能表示制度を需要者が適切な選択行動を支援する体制として位置付ければ、需要者に向け性能項目や表示方法等を考慮しなければならないと考えられる。その面からみると、現在表示するべき性能項目において需要者のニーズがどのくらい考慮されているのかが分かりにくい状況は改善の余地がある。

次に、供給者は「1-1重量衝撃音」、「2-2修理の容易性」、「3-1造景」等の性能項目に対して等級を向上させるための技術・コストの負担感を表しながら、等級に関する需要者の誤解の可能性、等級とコストの間にバランスの問題を指摘している。等級や数値等の意味を考えると、韓国の場合、等級は数字が小さいほど性能が高いことを表すように設定されているが、性能の高いことがただちにどの需要者にとっても最適なものになるとは限らないことを注意するべきであるといわれる[2]。この点は需要者の認識不足に伴う誤解をもたらす恐れがあるため、需要者への本制度の意義を十分に知らせる必要がある。しかも、一般的に住宅の建設コストは性能の向上に伴って上昇する傾向があるため、供給者、あるいは需要者に過度の負担増を招かないように性能とコストとのバランスを考慮しながら、設定することが必要であると考えられる[3]。

最終に、供給者は「3-1造景」、「3-2日照」、「3-3室内空気質」、「4-1住民共用施設」等の性能項目に対して評価方法の問題を指摘している。これらは、建物全体又は個々の住戸特性として捉えられるのか、設計段階で予測の程度が高いのか、客観的に評価できるのか等が問題となっている。以上のように指摘された事項は、制度を利用する供給者の意欲を奪うだけではなく需要者の誤解と紛争の原因をもたらす可能性があるため、表示項目や評価方法に対する見直しが求められる。


[1] 参考文献7)
[2] 参考文献8)によると、居住者自らのライフスタイル、工事費、地域の気候・風土、デザインや使い勝手など、性能表示基準の対象となっていない個別の事情などを考え合わせて、もっとも居住者に適した性能の組み合わせを選択することが重要であると記している。
[3] 参考文献9)によると、石坂(2004)は、性能表示に関する内容を十分に吟味しないで、等級が高いものや数値のようなものだけをむやみに要求したり、選択したりすることが合理的であるとは限らないと指摘している。

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