これを①保証問題と②紛争処理の問題に分けて考察すると、先ず、通常、表示された「性能」は、そのまま「保証」されると受け取られやすいが、住宅性能表示制度における性能は、性能に応じて級別された指標であって、性能そのものではないため、直接保証できないといわれている[1]。さらに、表示される等級や数値などは、合理的・客観的に設定された評価方法基準に従って評価された結果であるが、この範囲を超える居住者の実感や実測結果の程度について保証をするものではないことが示されている。従って、住宅性能評価書と契約内容との関係が曖昧であると、無用のトラブルを発生させる原因となる恐れがあると考えられる。そのため、日本では住宅供給者が請負契約(又は売買契約)の書面に住宅性能評価書やその写本を添付した場合や需要者に住宅性能評価やその写本を交付した場合には、住宅性能表示の評価書に表示された性能を有する住宅の建設工事を行うことを契約したものとみなすこととしている。反面韓国の場合は、評価書と契約書との関係が不明瞭になっており、供給者に対して実務的な困難を生じさせている。従って評価書と契約書との関係を明瞭にすることが必要であると考えられる。
次に、表示された性能が達成されていなかったといったトラブルが発生した場合は、②についての対策が必要である。韓国の場合、紛争処理は法廷の裁判に任せてきたが、最近、建築紛争調停委員会(建設交通部)や環境紛争調整委員会(環境部)で調停、仲裁ができるようになっている。しかし、紛争の内容・時点により、その利用は異なる。前者は、担保責任期間内の瑕疵の責任についての紛争の場合、後者は、担保責任期間に関わらず、住居環境に限り紛争の場合に利用することができる。また、住宅法により担保範囲・責任・期間及び紛争処理が定められているが、住宅性能表示制度との関係を考慮したものではないので、紛争処理機関と瑕疵担保範囲・責任等に関する法・制度の整備が必要であると考えられる。しかし、性能表示に従い、紛争の予防的機能を考えるなら、建設段階の評価の導入も考慮すべきであろう。
[1] 参考文献11)によると、松本(2004)は、表示性能は、設計理論に基づく仕様によって実現される水準の組み合わせを統合して「指標としての性能水準」に対応させているものであり、「ゆらぎ」があるため、表示された特定の性能水準が確実に実現されるのではないと示している。
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