本章では韓国の分譲集合住宅の供給者の受容特徴に対して以下の点を明らかにした。
(1)供給者の住宅性能表示制度に対する意識及び評価の特徴
①制度の利用については義務付け対象に限り利用する予定であるが、他社との差別化や製品の特長を示すために利用する意思があって販売促進の手段として利用される可能性が見られた。②制度に関する全体的評価では、制度導入の時期・義務化・性能評価基準・方法・認定の手順・関連情報等に対する否定的な意識と、制度の利用に従う技術の確保とコスト上昇の負担への懸念を示した。また、性能等級の表示による需要者の誤解・瑕疵等の発生の可能性があって、紛争処理機関の設置及び建設段階の評価の要望がみられた。③表示項目に関する評価では、先ず、「1.騒音部門」の軽・重量衝撃音・トイレ騒音等と「3.環境部門」の室内空気質・エネルギー性能項目等が重視された。改善の余地では「3.環境部門」の自然土壌及び自然地盤の保全・日照と「1.騒音部門」の重量衝撃音、「2.構造部門」の修理の容易性の共用部分の性能項目等が大きかった。改善の余地に対する指摘内容では評価基準の問題・コストの上昇と技術の必要、需要者の誤解等に関する内容が多かった。④本制度以外の性能項目の拡充には消極的であったが、結露防止対策・ライフサイクルコスト、住戸内収納比率、ゴミ処理方式、駐車台数・方式、セキュリティの確保、天井高等の表示に関心を示した。
(2)住宅性能表示制度をめぐる問題点と課題
供給者の意識及び評価に基づき、①義務付け制、②表示項目と評価基準の適正性、③紛争発生の可能性に集中し論点をあたえると、①については制度化の過程で社会的な議論の不十分さ、②については性能項目の妥当性・技術及びコスト的な困難、予測精度が乏しい評価方法、③については需要者の認識不足、評価書の法律的位置づけと紛争処理の対応等、制度上の不備な点を指摘することができる。これらに対して適切な対応が求められる。
韓国における住宅性能表示制度は、既存住宅の質・量的問題を情報の非対称性に着目し解消しようとすると表示するべき性能項目を標準化し需要者向け性能情報を提供する体制を構築したという点から高く評価される。即ち、住宅の商品化の進行に従い需要者の役割が重視される中で、住宅性能表示制度を通しての品質情報の提供は需要者の合理的な選択行動を支援し、良質の集合住宅の実現に向けて大きな役割を果たすことと期待される。しかしながら、今後この制度が社会への広範囲な普及に向けて今からどのように本制度を育ていくのかが課題となる。特に住宅性能表示制度をめぐる問題に対する論点の中心には需要者に深く関わるものであり、制度が今後目指すべき方向を示唆している。従って、施行初期の韓国において供給者から指摘された上記の事項を含め、需要者に対する制度の不備な点を改めて見直し、更に制度の充実を図ることは重要な課題となると考えられる。
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