現在、20性能項目ごとにその「重要さ」と「改善の余地」を3段階で評価した平均値を示したのが図3-4である。そして、改善の余地に対する問題点について自由記入の回答で指摘された内容を類型化し示したものが表3-2である。
全ての性能項目に対する重要さの全体平均値は2.23であり、ほとんどの性能項目が重要とされていることが分かった。部門別にみると、「1.騷音部門(2.54)」と「3.環境部門(2.29)」、「4.火災消防等級(2.24)」が重視され、最近の上下階の騷音・シックハウスの問題や安全性のニーズが反映したと見られる。しかし、可変性や修理容易性等の「2.構造部門(1.99)」は最低であり、将来のリモデリングを考慮した集合住宅の普及を図る行政の住宅政策の方向とのズレが見られた。重要な性能項目としては、1-1重量衝撃音(2.67)・1-2軽量衝撃音(2.67)・3-3-1室内空気汚染物質の低放出資材の適用(2.67)であり、1-3トイレ騒音(2.61)、3-4エネルギー性能(2.56)等の順番になった。
一方、改善の余地の全体平均値は1.95であり、「3.環境部門(2.04)」、「1.騷音部門(2.00)」・「2.構造部門(2.00)」等の順番に高かった。改善の余地が大きい性能項目とは、1-2重量衝撃音・3-2日照(2.22)、3-1-2自然土壌及び自然地盤の保全(2.17)、2-2-2修理容易性の共有部分(2.11)と2-2-1修理容易性の専有部分(2.06)等の順番になっている。「重要さ」と「改善の余地」との統計学的な相関関係(Correlation)はみられなかった[2]。ところが、改善の余地に対して指摘した内容(表3-2)を類型化すると、評価の方法の問題、コストの上昇、技術の必要、需要者の誤解等に関することが多かった。特に「1.構造部門」は技術の必要、「2.構造部門」は需要者の反応疑問、「3.環境部門」は評価の方法の問題、等の指摘が多かった。
(2)共通ルールを設け表示した方がよい事項
需要者が住宅選択の時に求める事項に比べ、限定されたものとなっている現状を考慮し、共通のルールを設け表示した方がよいと考えられる項目について尋ねた[3]。先ず、共通のルールを設け表示した方がよい項目の中で最も多いのは「10.結露防止対策」・「18.建物全体のライフサイクルコスト」、「12.住戸内の収納比率」である(図3-5の左)。その他、「5.住戸間の燃焼抑制」、「6.住戸の通風の良さ」等が挙げられた。更に物件情報の提供と広く捉え表示した方がよい項目については、「13.ゴミの処理方式」、「11.駐車台数・駐車方式」、「10.セキュリティ確保方法」、「2.住戸の可変性の天井高・躯体内法の高さ」等に関心を示した(図3-5の右)。しかし、内容の拡充に対してはヒアリング調査で負担感の声が聞かれた。
[1] 余地とは、余裕やゆとりの意味があるが必要を示した意味もあり、ここではこの意味で用いている。
[2] SPSS for win Ver.11によってr=.121, p=.612が得られた。
[3] この設問は、参考文献4)をもとに項目を作成しており、「ここでの表示とは、現在の評価機関審査や紛争処理とは別の扱いとし、かつ評価基準等のルールが極めて妥当であることを前提に」回答を得ており、純粋に需要者への表示の必要性を尋ねたものである。この理由は、評価技術の確立の状況の問題もさることながら、自社にとっての事務上の得失について過度な心配を排除することを意図したためである。
[2] SPSS for win Ver.11によってr=.121, p=.612が得られた。
[3] この設問は、参考文献4)をもとに項目を作成しており、「ここでの表示とは、現在の評価機関審査や紛争処理とは別の扱いとし、かつ評価基準等のルールが極めて妥当であることを前提に」回答を得ており、純粋に需要者への表示の必要性を尋ねたものである。この理由は、評価技術の確立の状況の問題もさることながら、自社にとっての事務上の得失について過度な心配を排除することを意図したためである。
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