両国の設計住宅性能評価の基準をみると、「性能の項目」、「表示方法」と「評価方法」において差異が見られた。先ず、性能の項目については、日本の場合、初めは5つの性能表示事項の設定の考え方等[1]に基づいた「9分野29項目」が必須と選択事項に分けて表示されたが、現在は改正を通じて「10部門32項目(2006.4改正)」になっている(表2-4)[2]。韓国の場合は全て必須事項であり、「5部門の14範疇20項目」になっている。選ばれた性能事項の特徴をみると、日本の場合は、地震が多発する地理的・住居文化の特性を反映し建物の安定・安全に関する項目が定められているが、音に関する項目は選択にしている。反面韓国の場合、構造的な建物の安定性に関する項目はあまり含まれずに長期耐用性と団地内の外部環境、住民共同施設に関する項目を盛り込んでいる。これらの項目選定には、技術的制御として活用する行政のニーズと韓国のアパートの計画的特徴が反映されたと考えられる。
次に住宅性能評価書の中の表示方法については、日本の場合、ランクに分けて等級(最低水準が1等級)、有・無や数値を表すという方法で性能が表示されている。反面韓国の場合は、ランクを分けだけで(最高水準が1等級)表示されており、最高水準等級は現在より5-10年後の技術開発及び状況を考慮し設定されている。なお表示する等級は、団地内の最低性能を基準にした。最後に評価方法ついては、日本の場合は性能を定量的に導出できるかによって「性能規定」の形態と「仕様規定」の形態の 2種に分かれているが、特に仕様規定の形態の中では定量的に表示することができない場合、あるいは難しい場合には、有・無、数値をそのままで表している。反面韓国の場合は、定性的指標を並べ、この該当する数を加算したり、指標別の加重値を与えて合算したりして評価している。例えば、可変性、修理の容易性、高齢者への配慮、室内空気質、トイレ騒音項目等がこれにあたる。
図2-11 日本と韓国の住宅性能表示制度の表示項目(共同住宅部門)
また、図2-11は両国の表示項目と関連項目を比較・整理したものである。両国の性能表示項目を「住環境の5つの基本理念(佐藤・浅見,2001)[3]」の視点からみると、日本は住棟の性能に注目し安全性と保健性に関する項目が多く、更に近年新しく定められた防犯項目も安全性と関連がある。韓国は、団地まで視野に入れ快適性に関する項目も定められている。また、住環境水準の視点からみると、日本は住環境の基礎的な水準となる基礎水準に、韓国は基礎的な水準に加え、良好な住環境の形成となる誘導水準に関する項目が多くみられており、両国における住宅事情と分譲マンションの計画及び設計の事情を各々反映していると考えられる。一方、表示方法と評価方法について日本は正確さを、韓国は分かりやすさを追求している。評価書での表示方法について日本の場合は、等級表示だけではなく数値や有・無を表示するため、等級しか表示しない韓国の場合より複雑である。また両国の評価方法は定量的な評価に基づく性能規定及び仕様規定の形態が併用されており、特に韓国の制度は一部の項目に対し定性的評価も行われている。
[1] 参考文献22)では「評価のための技術が確立され、広く利用できること」、「設計段階での評価が可能なものとすること」、「外見からでは容易に判断しにくい事項を優先すること」、「居住者が容易に変更できる設備機器等は原則として対象としないこと」、「客観的な評価が難しい事項は対象としない」と記されている。また、表示事項や評価に関する理解、施工の検査に役立つため、基本的な考え方についても記されている。
[2] 参考文献30)と31)によると、日本は制度の制定年から2006年まで多数の改正が行われており、室内空気中の化学物質の濃度の測定追加(2001.8.1)、防犯に関することの追加(2005.9.14)、省エネルギー基準及び消防法の改正に伴う改正(2006.3.27)、更新対策や免震構造の追加(2006.9.25)等を挙げることができる。
[3] 参考文献32)
[2] 参考文献30)と31)によると、日本は制度の制定年から2006年まで多数の改正が行われており、室内空気中の化学物質の濃度の測定追加(2001.8.1)、防犯に関することの追加(2005.9.14)、省エネルギー基準及び消防法の改正に伴う改正(2006.3.27)、更新対策や免震構造の追加(2006.9.25)等を挙げることができる。
[3] 参考文献32)
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