調査当時では住宅性能表示制度の利用実績がなかったが、ほとんどが今後について制度を利用する予定であると回答した(18社中17社)。今後の利用物件の範囲に対しては、「義務付けの対象(88.9%)」が多く、その他では「一部の物件(33.3%)」・「一部の地域の物件(16.7%)」となっている(複数回答)。利用の理由では、「12.義務付けの対象であるから」が最も多かったが、物件に対する「1.特長」・「11.差別化」を生み出す戦略もあり、需要者に対する「2.物件の信頼性を得る」ことや「4.企業の取り組みの姿勢を示す」ことも一部で見られる(図3-2)。供給者は本制度の性能を伝達する手段としての役割を期待しているが、物件の売れ行き向上、トラブルの防止等につながるとは考えておらず、消極的に法的対応のみを考慮している。
図3-2 住宅性能表示制度の利用予定の理由(N=17)
供給者は、本制度の施行に伴い、需要者の関心(a)が高まると予想した上、将来社会への定着(g)・社会的意義(h)・住宅の質の向上への役割(k)に対して肯定的に評価しており、製品及び企業の差別化の手段(i)・ブランドイメージの上昇(j)に役立つと考えている(図3-3)。しかし、性能評価基準・方法(o)・制度導入の時期(r)・義務化(s)・関連情報(t)等に対しては否定的に評価した。また、住宅性能等級の認定を受けるため、準備及び努力(d)・コスト(e)・技術(f)等が必要となるとの意見が多かった。さらに、住宅性能等級の表示等に従う需要者の誤解(b)・瑕疵・補修等の発生(c)が増えることを予想し、紛争処理機関の設置(v) の必要性を示した。これらに関してのヒアリング調査では、早急に制度化が行われたことを指摘し、制度の仕組みから評価基準及び方法等に至るまで制度の充実を要求した。設定基準が高すぎるため技術開発・確保と原価の上昇の負担を指摘し、等級を上げようとすることを諦めるやアパートの階級化をもたらすことを懸念している。また、性能表示に従い需要者の誤解と紛争発生に対する不安感が見られた。
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