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2010/04/01

第3章 韓国の分譲集合住宅供給者の住宅性能表示制度に対する意識及び評価/3.2 住宅性能表示制度に対する供給者の意識及び評価/3.1.2 全体的評価

(1)利用の範囲と利用予定の理由 
調査当時では住宅性能表示制度の利用実績がなかったが、ほとんどが今後について制度を利用する予定であると回答した(18社中17社)。今後の利用物件の範囲に対しては、「義務付けの対象(88.9%)」が多く、その他では「一部の物件(33.3%)」・「一部の地域の物件(16.7%)」となっている(複数回答)。利用の理由では、「12.義務付けの対象であるから」が最も多かったが、物件に対する「1.特長」・「11.差別化」を生み出す戦略もあり、需要者に対する「2.物件の信頼性を得る」ことや「4.企業の取り組みの姿勢を示す」ことも一部で見られる(図3-2)。供給者は本制度の性能を伝達する手段としての役割を期待しているが、物件の売れ行き向上、トラブルの防止等につながるとは考えておらず、消極的に法的対応のみを考慮している。

図3-2 住宅性能表示制度の利用予定の理由(N=17) 

(2)本制度に対する全体的評価
供給者は、本制度の施行に伴い、需要者の関心(a)が高まると予想した上、将来社会への定着(g)・社会的意義(h)・住宅の質の向上への役割(k)に対して肯定的に評価しており、製品及び企業の差別化の手段(i)・ブランドイメージの上昇(j)に役立つと考えている(図3-3)。しかし、性能評価基準・方法(o)・制度導入の時期(r)・義務化(s)・関連情報(t)等に対しては否定的に評価した。また、住宅性能等級の認定を受けるため、準備及び努力(d)・コスト(e)・技術(f)等が必要となるとの意見が多かった。さらに、住宅性能等級の表示等に従う需要者の誤解(b)・瑕疵・補修等の発生(c)が増えることを予想し、紛争処理機関の設置(v) の必要性を示した。これらに関してのヒアリング調査では、早急に制度化が行われたことを指摘し、制度の仕組みから評価基準及び方法等に至るまで制度の充実を要求した。設定基準が高すぎるため技術開発・確保と原価の上昇の負担を指摘し、等級を上げようとすることを諦めるやアパートの階級化をもたらすことを懸念している。また、性能表示に従い需要者の誤解と紛争発生に対する不安感が見られた。 

図3-3 住宅性能表示制度に対する全体的評価(N=18) 

第3章 韓国の分譲集合住宅供給者の住宅性能表示制度に対する意識及び評価/3.2 住宅性能表示制度に対する供給者の意識及び評価/3.1.1 住宅事業において重視する要素

本調査では建築請負の順位における20位以内の16社(88.9%)、20位以外の2社(11.1%)が調査対象になった。その中には制度の施行前に韓国住宅協会が行った性能等級の評価に参加した建設会社も含まれており、それらの企業ではプロジェクトチームや担当部署で制度に関する検討が行われた。設問票の回答者は「研究所」及び「技術部門」の所属と「課長以上」の役職が多かった[1]。供給者は住宅事業においてソウルと首都圏、500-1000戸規模の団地、中級以上の水準のアパートの供給を重視している。また、「1.立地の良さ」と「16.ブランドイメージ」を重視しながら、「14.住宅の品質・性能」を考慮していることが分かった(図3-1)。「8.団地内の外部空間」も重視されているが、優先順位は下位である。その他には「13.共用空間や施設の充実」、「4.外観デザイン」、「5.間仕切りの良さ」等が重視されている。ヒアリング調査で一部の供給者から現在住宅市場は居住目的の需要より資産を増やす手段として働いているとの認識も見られた[2]。

図3-1 事業において重視する要素(N=18) 

[1] 所属及び部署においては、研究所・技術が10名(55.6%)、商品企画・開発・戦略と設計が各々に4名(22.2%)であった。また、役職においては、部長・次長が5名(27.8%)、課長・選任が10名(55.6%)、代理が3名(16.7%)であった。
[2] この供給者の認識は、次の韓国の住宅価格の高騰を背景にした需要者の行動を意味している。韓国の住宅事情は2002年度に(旧集計方式の)住宅普及率は100%(全国基準)を達成したが、未だ首都圏地域を含め一部地域では量的不足が解消されていない。この量的不足に加え本文中に示したように不動産市場への投機性資金の流入は不動産の価格上昇を起きている。具体的には、1999年から2006年までの「全国住宅価格調査(国民銀行)」によると、この期間に住宅価格は毎年平均5.5%上昇した。また、今年発表された「全国共同住宅の公示価格(建設交通部)」によると、住宅価格は去年より全国平均22.8%(2006年は16%)上昇した。