2010/04/14

第4章 韓国の分譲集合住宅需要者の住宅選択と住宅性能に対する意識/4.4 本章のまとめ

本章では韓国の(K物件)分譲集合住宅の需要者の受容特徴に対して以下の点を明らかにした。

(1)K物件の需要者の住宅需要及び選択の意識と住宅性能表示制度の浸透実態
①需要者は、住宅及び住環境より住宅品質に対する不満を高く示している。②住宅購入の目的は良い住宅に住みたいという希望や物件不足も高く示しているが、主にこれからの生活に備えるためであり、住宅購入の資金的な困難を最も高く示している。③住宅に関する情報は、供給者に依存する傾向が大きく、建築費の内訳や健康の配慮程度に関する情報の要求が多い。④住宅性能及び品質に関しては、自己の理解不足と供給者の説明の不足を高く示している。⑤需要者の4割以上が住宅性能制度を知らないことを示しており、供給者の情報開示が適切に行われていない。

(2)合理的な住宅選択をめぐる問題
需要者の意識を総合的に検討すると、需要者の住宅に対する資産価値への偏重意識と共に、供給者の性能情報開示と性能情報流通の不十分を指摘することができ、「住宅の質に関する意識」「住宅の質に関する情報開示」「住宅の質に関する情報流通」の適正化が求められる。

(3)住宅性能表示制度の普及をめぐる問題及び課題
制度の普及において「運用面:義務制や供給者に依存する普及政策→需要者に向け普及対策の必要」「充実面:評価情報の信頼性に向けた仕組みの不備と維持管理と監視・監督の問題→仕組みの補完と監視・監督体制の整備」「基盤面:需要者・供給者の制度に関する認識の不足と評価情報流通の問題→制度の広報や啓蒙と評価情報の流通体制の整備」に問題及び課題を指摘することができ、更なる検討が求められる。

(4)住宅性能表示制度の補完の方向 
以上より、合理的な住宅選択と住宅性能表示制度の普及をめぐる問題を再整理し、制度の補完の取組みに関する知見が得られており、これらを表4-2に示す。韓国における住宅性能表示制度の充実が求められているが、制度の実効性や有効性を図るためには、何よりも性能情報の流通体制等に関する制度の基盤整備が必要となり、特に性能情報の提供と伝達プロセスの整備が求められる。これらの整備を通じ社会的に住宅性能表示制度の浸透を図り、物件選択時、あるいは物件の維持管理や入居後の段階で問題発生時にも役立つことができると考える。

表4-2 韓国の住宅性能表示制度の補完に向けて取組み